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「やべえな、まー大丈夫でしょ」
(……あれは失敗だった)
ルイは手が汗ばむのを感じながら、冷静に考えた。
(三日前のあの少年は、痛みを痛みとしか感じず、俺も何も幸福は得られなかった。俺は、俺はこんなのじゃなくて―――……)
罪悪感。ルイは確かにそれを感じていた。
しかし一方で、何か犠牲を出しても優先すべき自分の葛藤があるということも、分かっていた。
(……ベスは俺のこんな状態を知ってるんだろうか?知ってるなら、どこまで……。どこまで『ちゃんと』知ってる……?)
胸がざわつく。
そして少し、悲しい。
ルイは、ゆっくりと歩いていた。
自分の行き場のない気持ちと肉体の訴えを、鎮めようとして。
ルイがCLOSEの看板が掛かった本屋の角を曲がろうとしたところだった。
「!」
綺麗な瞳の少年。
いや、少女か?
ルイは完全に、目を奪われた。
曲がり角に急に現れた人物に。
ブルーの大きな目は、何かに怯えるように見開いていて、
鼻は小さく、唇は薄く、
頬と唇は赤い。
髪は天使のような金髪の巻き毛。
(何だ、この……昔の絵画のような……)
ルイは目を逸らせなかった。
その人物も、驚いたような表情でルイと目を合わせたまま、ルイに道を譲るように少し横にずれた。
「……どうも」
ルイは紳士を演じるように、相手に微笑を向けた。
そして相手がまだ目を逸らさないのを見て、ルイは、一言発した。
「天使?」
真顔でそう優しく言ったルイに対し、天使と呼ばれた人物は純粋に嬉しそうな笑顔を零した。
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