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天使だ。天使そのものだ。
ルイは思った。
今夜この天使を、自分の身の近くに置きたい。
ルイは、誰もが魅入ってしまうような優しい笑顔を浮かべて相手を見つめた。
「……あっ……」
ルイに見つめられ、躊躇うように息を吐く。
天使のその仕種ひとつひとつに、ルイは胸を打たれた。
「あ……」
相手の手を取り、ルイは近付いた。
「名前をお聞きしても?」
囁くように尋ねるルイ。
「……ローズ」
天使はそう答えると、ぱっと手を離し、その場から走り去った。
「待って!!」
ルイは自分でも驚くような悲痛な声でそう叫んだ。しかしローズは振り向くことなく、街の角へ消えて行った。
「……ローズ」
(女性だったのだろうか)
ルイは胸を抑えた。恋をすると胸が痛くなるという表現は良く聞くが、本当に痛むものだとは知らなかった。
(……ローズ……なんて白い肌だ。それにあの怯えた美しい瞳……)
ルイの胸のざわめきは、出掛ける前より強くなっていた。しかし誰か適当な人物を探して痛め付けようなんて気持ちは、一切起こらなかった。
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