ルイの葛藤

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辺りがもうどっぷりと暗く、体がくたくたになった頃、ルイはポケットにしまっている懐中時計を見た。……9時半。 いつもなら、この時間は後回し出来る仕事をのんびりやっていたのだが、今日は残りを明日に回して帰ることにした。 (……半月) ルイは月が好きだった。 孤独なルイは、どこまでも付いて来てくれる月に、最近特に安心感を覚えるようになっていた。 (……つまりそうか、精神的な、問題なんだ……) 自分がさまよう理由。 ルイはその事について、静かに考える。 精神的なモノを、肉体に込め、吐き出す。 受け手はただソレを総て受け取り、喜びに変える。 羞恥や、背徳感、痛み、悲しみ、自分の考えとの矛盾による葛藤など……。それらは、果たして必要なものなのだろうか。 (ローズ。君は) 風が勢い良く吹いた。 恐ろしく冷たい風に、ルイは眉をひそめた。 (ローズ……女なの?男?どんな躯をしている? 異性との経験はない?俺が触れると君はどう感じる? 君はどう反応する?君は何を考えて……?) 実際、今のルイにとって、ローズはただの媒介だった。 出会ってまだ外見的なことしか知らない、次会えるかも分からない。自分の葛藤を都合良く詰められる、媒介。 「……」 ルイは目が合った。 昨日ローズと出会った本屋の角で、まるで影のように佇む、一人の大柄の男性と。 .
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