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ここで待てばローズが通るかもしれない、と淡い期待を持っていたのに、思わぬ先客が居たことでルイは少し面食らった。
40歳頃だろうか。南米系の血が入っていそうな浅黒い肌に、短く切った髪、黒いシルクハットを被り黒いスーツに身を包んでいた。
身長は190センチくらいで、肩幅がルイの1.5倍はありそうだった。
(……やばい)
ルイには分かった。
というのは、単に男性の体格の良さやリッチな服装によるものだけでなく、男性の持つ雰囲気がエリザベスの持っているものと似ていたからだった。
ルイはサディストだが、サディストは自分よりサディスティックな存在に出会うと、
時として、マゾヒストより下になる。
「……ハロウ」
ゆっくり、男性が口を開いた。
「ハイ」
ルイは17の若者らしく、感じ良くそう答えた。しかし目は笑えていなかった。
「誰かを捜しているのかい」
「……」
男性の問いに、ルイは黙った。
どういうことだ?ローズのことを言っているのか?何故?
ルイの沈黙は、男性にとっては充分な返答になっていたようだった。
「俺は嫉妬深くてね」
男性の言葉に、ざわ、とルイは鳥肌が立った。
「こんな若い男に現を抜かされると、殺してやりたくなるのよ」
殺す
誰を
俺じゃない
ローズを?
現を抜かす?
ローズが、俺に?
「……何故、……」
ルイはそれ以上、言葉が続かなかった。
実際は、この男性に聞きたいことが山ほどあった。しかし、それより優先すべきことがあるように思えた。
「……ローズに関わると、お前もヤバイぞ。金持ってんなら別だが。……お前、お嬢ちゃんみたいだしな」
? ? ?
「何にしろ俺は、……個人的に許さねぇよ。お前みたいな呑気な蝶々がヒラヒラ舞ってんのがよ。……二度とローズの前に現れんな」
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