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昼休みが終わり、五限目の授業が始まった。
科目はあたしの嫌いな数学。
文系のあたしにとって、週に六回ある数学はとても憂鬱だ。
だから担当の鈴木先生に見つからないように前の人の陰に隠れるようにして窓の外を眺めるのがあたしなりの処世術だ。
ちなみにあたしの席は窓際の前から四列目。
二年生に進級後、初めての席替えで運よく獲得した、あたしの中でベストスリーに入る好位置だ。
窓から見える空にはてっぺんから少し傾いた太陽があり、その光を遮るようにしてうっすらと広がった雲のベールがかかっている。
数秒間眺めているうちに、その雲のベールはゆっくりと風に流されていき、また太陽が顔を覗かせて日の光を街に浴びせた。
「……月、……美月」
校庭の周りに植えてある、晩春の花が散って葉が茂ってきた桜の木をぼんやりと見ているところへ、かろうじて聞こえるほど小さな声で自分の名前が呼ばれるのが聞こえた。
「美月ってば」
ふと右腕に違和感を覚えたのでそちらを見ると、隣の席のあかりちゃんがシャーペンであたしの腕をつんつんと突いている。
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