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「美月、どうかした?」
水瀬さんが行ったあと、まだ棒立ちだったあたしを見たあかりちゃんが不思議そうに尋ねてきた。
「あ、ううん…なんでもない」
あかりちゃんはあたしが同性を好きだと言うのは知っているけど、水瀬さんを好きなことは知らない。水瀬さんを好きなのがあかりちゃんにバレるのは構わないけど、何となく言う気にはならなかった。
「ほら、あかりちゃん。早くしないと日が暮れちゃうよ」
「うん」
あまり納得していなさそうなあかりちゃんを責っ付いて、下駄箱で靴に履きかえて校舎を後にした。
それからあたし達は他愛のない話をしながら帰り、あかりちゃんの家が近くなったところで別れた。
あかりちゃんと別れた交差点から10分ほど離れた団地の一角にあたしの家がある。
「ただいまぁ」
自宅のドアに鍵を差し込み、玄関を開け、帰宅を告げても誰の返事も無い。
あたしの両親は共働きで、お母さんは近くのスーパーにパートに出ているから、大体六時くらいに帰ってくる。
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