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今は四時を少し過ぎたころだ。
お母さん達はあたしを大学に行かせたいらしく、必死で貯金を貯めている。
特別やりたいことが決まっていないあたしにとってはなんとも耳の痛い話だ。
もっとも、一年生の最初のころなんかは漠然とした将来像なんかは無くもなかったのだけど、やっぱりそれは凡人のあたしにとっては現実的に考えて難しいもので、早々に諦めてしまった。家に入ると、あたしはすぐに階段を上がって自室に入り、制服のままベッドへ倒れ込んだ。
のそのそと上着を脱いで床に放り投げて、ネクタイを緩める。
仰向けになり天上を見上げていると水瀬さんの姿が脳裏を横切った。
「あたしには高嶺の花だよね…」
心の中で呟いたつもりが、自然と口をついて出てしまった。
高嶺の花というか、彼女は女であたしも女。
そもそも恋愛が成り立つのかさえ怪しいくらいだ。
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