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『竜太郎竜太郎っ、私やっとペン回しを会得したんだよ!』
『ほぉやっとか』
一週間、受験勉強そっちのけで練習していたらしい。
おもむろにコートの中からシャーペンを取り出した。
『行くよぉ…ほいさっ!』
光希の手のひらで自由自在にシャーペンが滑る。
『無駄にスゴいな』
『でしょー?』
二人は大通りから脇道に入った。
その先には小さな公園があり、いつも塾帰りはそこを通っていた。
『こんな事も!』
『スゴっ、手首でずっと回ってるな』
光希がクルクルとシャーペンを弄んでいた時だった。
『あひゃっ!』
光希が足を滑らせた。
雪こそ降ってはいないが、地面が凍っていたらしい。
俺は反射的に光希を支えようとした。
『わわわわわっ!』
『光希!?』
すると光希は体勢を立て直したが、俺に驚いたらしく今度は俺に向かって倒れ込んだ。
光希を引く気マンマンだった俺は支えられるわけもなく。
『うわっ』
『だっ』
二人とも派手に転んだ。
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