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ザンッ
最後の一匹をアルサルが斬り倒した。
「やったなっ!これで当分食べ放題だっ!」
「………」
喜ぶモルガンに対して、アルサルは浮かない顔をしている。
「どーした?浮かない顔だぞ?」
「……何だろう……今夜はずっと、変な感じがするんだ。」
独り言を言う様に、小さな声で呟く。
「村を空けすぎた気がする……今の村には女子供しか残っていないのに!」
そんな不安をモルガンは笑い飛ばした。
「あはは、この辺りで誰が襲って来るって言うんだ?あたしたちゲール族と猪くらいしか居ないぞ」
「わからない……」
「山賊でも出るのか?帝国の連中は港の側にしか居ないし、あたし達とはど~めいしているんだろ?」
正しくは同盟だ。
モルガンの様に笑い飛ばせれば一番いいのだろうが、不安は収まる所か、徐々に増していく。
「わからない……」
一度、目を瞑り、少し考え、開く。
「……とにかく、狩りは中止する!急いで村に帰るぞ!!」
「アルサル!?」
決めた事は即実行。この場のリーダーを務める者として、モルガンに指示を出す。
「これは一の戦士としての命令だ!ゲールの戦士団にも伝えてくれ!!」
「わ、わかった。すぐ帰ろう!お前がそこまで言うんなら、何かあるんだろ!」
驚いたモルガンだったが、一瞬の後に我にかえり、己に課せられた仕事をこなすために走り出した。
「待ってろ、すぐに伝えてきてやる!!」
モルガンの姿が見えなくなり、また星空を見上る。
「……リアンノン、どうか…リアンノン無事でいてくれ」
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