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兵士たちがリアンノンの前で止まる。
真ん中から、兵士たちの着る鎧ではなく、魔導師や聖職者の着る様なローブに身を包んだ人が出て来る。
「我は神聖帝国主席司祭ドルウク!心して聞くがいい、蛮族ども!」
村の隅から隅まで響き渡る様な大声でドルウクは続ける。
「この郷はたった今から、我らが栄えある帝国の支配下に入った!意義が有る者は、直ちに進み出るがいい!全ては、互いの剣と力によって決定されよう!!」
「………」
リアンノンは無言で睨み返す。
「沈黙か……。物分かりの良い奴らだ」
ドルウクの顔は悪意に満ちた笑みをたたえている。
「隠れている者は出て来るが良い!この郷は我が軍団によって完全に囲まれている。最早逃げ出す事は何人たりとも叶わぬ!」
これだけ言っても、家々から人が出て来る気配は無い。
それ所か人が居る気配すらない。これでは廃墟である。
「長は何処か!兵ども、何をしている!さっさと蛮族どもを引きずり出せ!逆らう者は耳を削ぎ、目をくり抜け!」
数人の兵士が、村人を探しに行く。が、勿論見つかる筈もなく、
「ドルウク様、誰も居ません!蛻の殻です!」
「村の周囲にも、森の中にも見あたりません!」
その報告にドルウクは叱咤する。
「なんだと?よく探せ!そんなはずは無い!!」
ドルウクは、近くにいたリアンノンに聞いてきた。
「おい、そこの小娘!仲間はどうした?」
「あ、あの……」
怖くて俯いてしまいそうな顔を何とか上げたまま、精一杯強がってリアンノンは言う。
「兄さま達は、狩りに出ていて明後日まで戻りません」
「知っている。男衆が皆出払っていることはな。貴様等の厄介な戦士団が居ないからこそ、やって来たのだ」
先程と比べれば、比較的静かな声でドルウクは喋る。
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