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「タイム!!」
夏樹がタイムをかけマウンドに近寄った。
「楓投げにくそうだね。」
「あぁ・・・。小柄だから少しな。」
「フォアボールで塁に出すのも嫌だからさ、打たせなよ。」
夏樹の言葉の意味が楓にはよく理解できなかった。
その様子に夏樹は笑いながら続けた。
「力抜いてさ、置きにいってもいいからストライク投げなよ。4点差あるし、もし打たれも僕達が守るから。フォアボールで塁に出した方がリズム崩れるよ。それにたぶんあのバッター打ってこないよ。」
「打ってこないってどういうこと??」
「とにかく投げてみなって。すぐわかるから。」
夏樹は笑顔でそう言うと守備位置に戻った。
楓は力を抜きボールを投げる。
シュッ・・・パシ!!
「ストライク!!」
90㎞のスローボールがど真ん中に決まった。
『ホントに手を出してこないな。何でだ??』
楓はもう一球同じような球を投げた。
「ストライク!!」
またも手を出してこない。
そして6球目またもスローボールを投げる。
キン!!
「ファールボール!!」
田中が今度は手をだしてきた。
しかし90㎞前後の絶好球をカットするようなスイングだ。
7球目、8球目もスローボールをカットする。
9球目を投げる直前、またも夏樹がタイムをかけ周都も呼び楓に言う。
「楓、カーブでストライクとれる??さっきと同じくらいの速さでさ。」
「なんとかなるとは思うけど・・・。今度はどういう訳??」
周都も不思議そうだ。
夏樹が答える。
「あのバッター中学生の時に見たことあるんだよ。たしか本郷第一中だったかな。とにかく打ってこないんだ。カットするだけ。つまりフォアボールで塁に出るんだ。足はかなり速いから面倒だよ。ここまでスローボールだから同じような速さでカーブ投げればたぶん引っかけるよ。」
「そんなバッターいるのかよ!?」
周都は納得できない様子だ。
「そうだね。理解しがたいけど実際絶好球をカットしかしないからね。周都ならホームランでしょ??」
夏樹は笑いながら言った
「まぁ俺ならかっ飛ばすな!!!よし、カーブで行こう。打たれも飛ばないだろうし。」
そして二人は守備位置に戻った。
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