第7章 公式戦

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「タイム!!」 夏樹がタイムをかけマウンドに近寄った。 「楓投げにくそうだね。」 「あぁ・・・。小柄だから少しな。」 「フォアボールで塁に出すのも嫌だからさ、打たせなよ。」 夏樹の言葉の意味が楓にはよく理解できなかった。 その様子に夏樹は笑いながら続けた。 「力抜いてさ、置きにいってもいいからストライク投げなよ。4点差あるし、もし打たれも僕達が守るから。フォアボールで塁に出した方がリズム崩れるよ。それにたぶんあのバッター打ってこないよ。」 「打ってこないってどういうこと??」 「とにかく投げてみなって。すぐわかるから。」 夏樹は笑顔でそう言うと守備位置に戻った。 楓は力を抜きボールを投げる。 シュッ・・・パシ!! 「ストライク!!」 90㎞のスローボールがど真ん中に決まった。 『ホントに手を出してこないな。何でだ??』 楓はもう一球同じような球を投げた。 「ストライク!!」 またも手を出してこない。 そして6球目またもスローボールを投げる。 キン!! 「ファールボール!!」 田中が今度は手をだしてきた。 しかし90㎞前後の絶好球をカットするようなスイングだ。 7球目、8球目もスローボールをカットする。 9球目を投げる直前、またも夏樹がタイムをかけ周都も呼び楓に言う。 「楓、カーブでストライクとれる??さっきと同じくらいの速さでさ。」 「なんとかなるとは思うけど・・・。今度はどういう訳??」 周都も不思議そうだ。 夏樹が答える。 「あのバッター中学生の時に見たことあるんだよ。たしか本郷第一中だったかな。とにかく打ってこないんだ。カットするだけ。つまりフォアボールで塁に出るんだ。足はかなり速いから面倒だよ。ここまでスローボールだから同じような速さでカーブ投げればたぶん引っかけるよ。」 「そんなバッターいるのかよ!?」 周都は納得できない様子だ。 「そうだね。理解しがたいけど実際絶好球をカットしかしないからね。周都ならホームランでしょ??」 夏樹は笑いながら言った 「まぁ俺ならかっ飛ばすな!!!よし、カーブで行こう。打たれも飛ばないだろうし。」 そして二人は守備位置に戻った。
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