第3章 それぞれの決意

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こいつらだけだった。俺を藤堂雄斗の息子ではなく、藤堂楓として扱ってくれたのは。 もちろんこいつらが父さんの輝かしい歴史を知らないわけではない。むしろよく知ってる。小学生の頃父さんが俺たち3人に野球を教えてくれたのだから。 こいつらは知ってた。俺が周りの大人達から勝手に期待されて失望されていることに滅入っていることを。 最初に救ってくれたのは周都だった。 あれは中2の地区大会。 2回戦でサヨナラ負けした時。あれも敗因はほぼ俺だった。スタミナがキレて制球が乱れランナーためてからサヨナラヒットを打たれたんだ。 あの時も大人の目は怖かった。話し声は聞こえなくっても分かってた。藤堂雄斗の息子なのにあの様かって言われてる気がしたんだ。 でも周都は俺の横でこう言った。 「お前のピッチングは誰にも責められねぇよ。お前は2点しかとられなかったんだ。援護できなかった打線も悪いんだ。気にすんじゃねぇよ!!まっお前もスタミナアップが今後の課題だな!!」 そう言って俺の背中を叩いて笑ってたな。みんなも俺達のやり取りをみて笑ってた。 敗因はみんなの責任。打てなかった周都たちも、最後でバテた俺も悪い。 でも大人達はやっぱり違って、最後ヘバって打たれた俺のことばかりを敗因にするんだよな。 あの時お前が打たれなかったら勝ってたのに。それでも藤堂雄斗の息子かってね。
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