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「楓、今から正治がうちに来るそうだぞ。すごく喜んでいたぞ。」
俺は一安心した。
そして間もなくして真田さんがうちにやってきた。
「こんばんは、昨日はすまなかった。君の気持ちを考えず身勝手なことばっかり言ってしまったね。」
真田さんは深々と頭を下げた。
「いえ、俺の方こそ何も知らない方にあんな怒鳴っちゃって・・・こちらこそすいません。春からお世話になろうと思いますが本当によろしいんでしょうか??」
真田さんは満面の笑みで言った。
「もちろんだよ。一緒に甲子園を目指そう。ところで急に気持ちが変わった理由を教えてくれないか??」
俺は父さんと母さんに話したことをそのまま真田さんに伝えた。
すると真田さんはまた満面の笑顔で言った。
「やっぱり親子だな。仲間を大切にするということがどれだけ大事なことか分かっているみたいだ。野球は団体競技だ。どれだけ仲間を信じれるか、大切にできるかが重要なことなんだ。その思いが強まった時どんなに格上の高校が相手でも奇跡が起こる。まぁ私も雄斗にそれを教わったんだがな。」
笑いながらそう話してくれた。
この人は違うと俺は思った。
昨日雄斗の息子だからと言っていたが、それは本当に俺を目にとめるきっかけにすぎなかったのかもしれない。たまたまあの時スタンドにいた父さんに俺を紹介され、そして俺の秘めた魅力に気づいてくれたのかもしれない。
俺はこの人を信じてみようと思った。
あの日から初めてと言ってもいいかもしれない。
大人を信じれると思ったのは。
もしかしたら俺が勝手に決めつけていただけなのかもしれない。
大人はみんな一緒だと。
俺が勝手にそう思って避けていたのかもしれない。
俺自身まだこの時は気づいていなかったが、少しずつ俺の傷は癒えていた。
そして真田さんは本当に気づいていた。俺のまだ秘めた力を。
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