俺の仕事の邪魔すんな

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カタンと音をたてて、疾風は立ち上がると、 冷酷な顔でソファーに寝転がる信一を見下ろした。 「俺は二度同じ過ちはしない。 情なんかで行動を左右しない。 誰かの為とかそういうの、嫌なんだよ。 徹底的に、あいつが此処にいる理由を絶ったのを知っていて、良くそんな発想が思い浮かぶな。おまえの脳はいつも腐ってる」 信一は、一気にココアを飲み干すと、ふぅん、と言って立ち上がった。 「ま。そろそろ純情ロマン○カのDVDセット届くはずだから、俺はもう寮に戻るよ」 カップをそのままに、BL本をひらひらさせて、戸をガラガラと開く。 「本当、常に腐ってるな」 「また、楽しい事あるなら声かけろよ」 戸を閉めて、 信一が出ていった室内はシンと静まりかえった。 疾風は、手に持っている李白瞑の資料の束を一瞥すると、 「もう、必要ないか」 ごみ箱の上に手を持ってゆき、力を抜くと―… バサバサバサバサ 音を響かせてごみ箱の中に落ちる資料。 次の瞬間には、もうその存在を忘れたようにパソコンの作業を開始した。 「用済みの人間は、 覚えていても仕方ないから削除」 パチンとキーを押すとパソコンのデータを一人分削除が始まった。 仕事を真っ当し、裏を抜けて戻るつもりはない。 表に馴染むつもりもない。 ただ、楽しく、したい事をする為に、今は仕事だけを考える。
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