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カシャン――ッ 「……ありえないっての」  職場の屋上のフェンスにもたれかかりながら、つぶやいた言葉は宙に消えた。 私――原田美緒――は、3日前に結婚まで考えていた相手に振られた。 原因は、相手の浮気。 『主人と別れて下さい』 浮気相手だったのは、私の方だったらしい。しかも相手には美人な奥さんと3歳になる娘がいるそうだ。 まさか。自分がそんな昼ドラのような修羅場を体験すると思っていなかった私は、ただ呆けることしか、できなかった。 『私、妻です。』 『娘もいるんですよ!?』 『妻も娘もいる人を口説いて、恥ずかしいと思わないんですか』 いや、口説かれたのは私なんだけど。そもそも、家庭があったなんて知らなかったし。 とか、なんとか言えたらよかったんだけど、言い返す気力もないほど、ショックは大きかった。
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