ある街の片隅にて

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少女は静かに、そして、素早くカードを配る。 その度少女の漆黒のショートヘアが微かに揺れる。 顎を引いて下を向いていると、前髪が長いせいかほとんど目が見えない。 少女の手が止まる。少しの沈黙の後。 「…ひとりしかいないんだ。そっちが先いけよ」 テーブルに座る中年の男性がぶっきらぼうに言う。 「はい。かしこまりました。」 少女は顔を上げて前髪を耳に掛けて頷いた。 黒い前髪の間から青い瞳がしっかりと相手を見つめた。  
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