5人が本棚に入れています
本棚に追加
「……。」
それを見つめる若い男性の中に前田がいた。
外見は細身で180近い身長に、金髪のスキンヘッドにフレームなしの眼鏡、という姿。
前田はおもむろにポケットから携帯電話を取りだし、耳元にあてた。
表情はなく、ただ口を動かすのみ
その前田の横で、男性同士が小声で喋る。
「あいつ今日はじめてだよな?なんかスゲーな…」
「ああ、なんか動じないな。経験あんじゃねーの?」
ひそひそ喋るスタッフを尻目に前田は話しを終え、携帯電話を静かにたたんだ。
そして、先ほどの電話していた時の表情とは真逆に、とてもにこやかな表情になり、
「お前らも頑張れよ!」
そう言いながら前田の近くにいた若い男性の肩に手を掛けた。
ニヤニヤしたような表情のなかに、冷たい棘(トゲ)のあるような笑顔だった。
それが前田の最高の笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!