ある街の片隅にて

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「……。」 それを見つめる若い男性の中に前田がいた。 外見は細身で180近い身長に、金髪のスキンヘッドにフレームなしの眼鏡、という姿。 前田はおもむろにポケットから携帯電話を取りだし、耳元にあてた。 表情はなく、ただ口を動かすのみ その前田の横で、男性同士が小声で喋る。 「あいつ今日はじめてだよな?なんかスゲーな…」 「ああ、なんか動じないな。経験あんじゃねーの?」 ひそひそ喋るスタッフを尻目に前田は話しを終え、携帯電話を静かにたたんだ。 そして、先ほどの電話していた時の表情とは真逆に、とてもにこやかな表情になり、 「お前らも頑張れよ!」 そう言いながら前田の近くにいた若い男性の肩に手を掛けた。 ニヤニヤしたような表情のなかに、冷たい棘(トゲ)のあるような笑顔だった。 それが前田の最高の笑顔だった。  
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