最後の時間

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 その翌日のことは、よく覚えていない。 …というより、思い出したくないと脳が強烈に反応しているのだと思う。 その日は朝から小雨が降っていて、「お気に入りの服が濡れちゃう」と穂波が文句を言っていたことは覚えている。 それで、おしゃれに気を遣うのはいいが寒そうだったので、オレの上着を掛けてやったのだ。 「わっ、圭ちゃんのあったかーい」 そう言って笑った穂波が、その日最後に見た彼女の笑顔だった。 帰りのバスに乗り込み、疲れ果てた二人は完全に眠っていて…。 ――気付いた時には、有り得ない程に大きくバスが揺れていて、オレは本能的に隣の穂波に覆いかぶさり、「彼女を守らなければ」と必死になっていたのだった。 そして――大きな衝撃と共に、オレは意識を失った。  
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