帰り道、横顔の君

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「今日、一緒に帰ろう。野球部あるから、遅くなるけど、下駄箱の所で待ってて」 智也は帰りのホームルームが終わると、私の傍に寄ってきて、ぼそっとつぶやいた。 そして、私が答える間もなく、すぐに教室を出ていってしまった。 智也との会話を他の人に聞かれると、恥ずかしいし、何か言われたら照れくさいから、なるべく教室でも一緒に居ないようにしている。 だからいつも、学校から帰って、メールするだけ。それなのに、今日は珍しく、学校で話しかけてきた。 私は、何度もその様子を思い出しながら、すのこに足を置き、廊下との段差に腰掛けて、おとなしく待っていた。 辺りはすっかり暗くなり、どんどん部活を終えた生徒が下校していく。 同じクラスの野球部員も私の姿を確認すると、ニヤニヤしながら、智也は今着替えているから、もうすぐ来るよと声を掛けて、帰っていった。 しばらくすると、生徒の話声も消え、しんと静まり返った校舎から、ゆっくりとした歩で近づいてくる足音がした。 私は、振り返る。 すると、智也は照れくさそうに下を向いて、はにかんだようにしながら、ごめん、待った、と聞いてきた。 私はこの笑顔が大好き。 控えめに笑う仕草に、智也の優しさが溢れていて、とても温かい気持ちになるから。 だから私も自然と口元が緩んでしまう。 行こうと言われて、私は智也の後ろをついていく。 校門を出ると、彼は振り返って私を待った。 そして、二人並んで歩き始める。
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