鈴ノ崎紗月の憂鬱

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俺は紗月の息を確認する。 …まだ息をしている! 俺は紗月を連れてビルの階段を下りだす。 午後7時11分 廃ビル前 辺りはすっかり暗くなっている。 俺の腹が飯を求めているが今はそれどころじゃない。 紗月を病院に連れていかなければ。 言い方が悪いが、紗月の胸にナイフが刺さっているおかげで俺の服に付いている田中雅人の血がごまかされている。 「アンタ、大丈夫かい?」 知らないおばさんが話し掛けてきた。 「…大丈夫です。」 「いや、アンタじゃ無くて、そちらのお嬢さん…」 「心配しないでください。俺が病院に連れて行くんで。」 「救急車呼んだ方が…」 「…待ってられません。心配してくれてありがとうございます。」 俺は再び歩みはじめる。 「大丈夫かい?」 サラリーマンか。 「はい。大丈夫です。」 「そちらのお嬢さん…まさか…鈴ノ崎さんの娘さんじゃ…?」 「…」 俺は再び歩みはじめる。 サラリーマンがついて来る。 「どうしてこうなった?」 「あなたに教えても何も変わりません。」 「…そうだな。ただ、一つだけ教えてくれ。その娘は…」 「鈴ノ崎の娘さんですよ。」 「…そうか。ありがとう。」 その後、色々な人に話し掛けられたが皆同じ様な事しか聞いてこなかった。 プルルルル ケータイが鳴っている。 電話か。 だが、紗月を病院に連れていくのが最優先だ。 午後7時45分 病院 「まだ診察してくれますか?」 「!?」 受付の人が驚いている。 「つ…着いてきてください。」 俺は受付の人に着いて行く。 診察室 「おやおや。これまた危険なお客様だね。」 白髪の男性の医者がこちらを見ている。 「君に外傷はなさそうだね。ただ、二つの血液が混ざっている。」 この医者…すごいな。 「後ろのお嬢さんは…鈴ノ崎紗月さんだね。」 「よく分かりましたね。」 「その子は病弱だからね。よくこの病院に来るんだよ。」 確かに紗月はよく学校を休む。 「今回は病気…ではなさそうだね。すぐに手術室に連れていこう。君も来なさい。」 「…はい。」
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