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「知ってますよ。あなたの過去に戻る能力の事。」
何故だ…俺は口外していないのに…
谷澤先輩が窓の外を見る。
「あなたがしている事_過去に戻り、人を助ける事_これは一見、とても良い事をしているように見えますよね。」
「…実際、良いことなんじゃ…」
「いいえ。これは貴方の自己満足でしかない。あなたは自分の事しか考えて無いのですよ。」
谷澤先輩が窓に手を触れる。
「知らないようなので教えてあげますね。貴方が過去に戻ると、この世界が狂うのですよ…」
「どういう事ですか。」
「うーん、言葉では表しにくいですが…そうですね、貴方の体に体を狂わせる薬を入れる_とでも言っておきましょうか。」
「…つまり?」
「…少し話が逸れますが、私達谷澤一族はこの世の生まれ変わりと言われているのです。」
聞いたことがある。
「貴方がしている事は運命を変える事。運命が変わると未来が変わる。これはこの世に害を成す事なのです。」
…良く分からない。
「良く分からないって顔をしていますね…実は、私も良く分からないのです。」
窓に映る谷澤先輩は、とても辛い顔をしている。
「貴方が過去に戻ると、私が苦しいのです。貴方が過去に戻ると、体を狂わせる薬が私に入れられるのです。」
…つまり、俺が過去に戻る事は谷澤先輩_この世に害を成すという意味か?
「少しでも今の話を理解して頂けたなら私は喜びますが…」
「まだイマイチだけど、一応は分かりました。」
「…そうですか。_では、次に私の能力についての話をしましょうか。」
谷澤先輩の能力_紗月をバラバラにした能力の事か。
「貴方が過去に戻る能力ならば、私のは現実に戻す能力です。」
「…まさか。」
「貴方が何を想像したのかは分かりませんが、つまり_貴方が過去に行き、変えた未来を無かった事にするという意味です。 あぁ、日本語って難しい…」
という事は…今の紗月は田中に殺された紗月なのか…?
ちらりと紗月_もとい、赤く染まったベッドを俺は見る。
そこには先程謝ってくれた紗月の顔がある。
俺に吐き気が襲う。
駄目だ…これは人だ… 人を見て吐くなんて失礼極まりないぞ俺! これは…これは紗_
「オェッ…」
「…大丈夫ですか?」
谷澤先輩が俺の背中を撫でてくれた。
こうして見ると頼れるお姉さんである。
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