鈴ノ崎紗月の憂鬱

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しかし俺は卑怯な奴だ。 こんなに簡単に人を騙すのだから_ 「なーんちゃって。」 俺は谷澤先輩の腹を思いっきり殴った。 「!?」 谷澤先輩は腹を押さえて突っ伏する。 「谷澤先輩には弱点も隙も無いと思ってたんですけどねぇ。」 「私も…人ですから…」 谷澤先輩が少し潤んだ目で引き攣った笑みを浮かべている。 「それにしても…素晴らしい作戦を立てましたね…見事引っ掛かりました…」 「ははっ。…俺が何回紗月の死体を見てきたか…ご存知無いですよね。」 「…9回…ですかね。」 「!?」 「その様子だと…図星のようですね…」 「…何故分かったんですか。」 「…知らないようなので…教えてあげますね。あなたが戻しているのは…この世の地盤以外です…」 「…といいますと?」 「つまり…もういいです。私も分からなくなってきましたから。_とにかく、貴方では私は戻せない…私は貴方に一度も戻されていない存在なのです。…何故かは分かりませんが。」 …マジでややこしい。 「…時を戻して彼女を助けてあげてください。」 「言われなくても。」 「あ、最後に一つ…」 「…何ですか。」 「私は昨日の夜から谷澤から花澤になりました。」 「…先輩も辛い人生を送っているんですね。」 そして俺は過去へ_
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