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目の前に立っていたのは、まったく知らない人だった。
きょとんとする私に彼は笑いかける。
「はい、これ」
差し出されたのは温かいココアの缶。
「え……でも……」
「俺のおごり。それ飲んで元気だしてよ」
彼は、ぐいっと無理やり缶を私の手に握らせて、にこっと笑う。
綺麗な黒髪が風に揺れて眼鏡にかかる。
一旦眼鏡を外して髪を整えてからかけ直す。
その一連の動作を、私は呼吸すら忘れて見惚れてしまっていた。
綺麗な人。
それが彼に対する私の第一印象だった。
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