①‐1

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目の前に立っていたのは、まったく知らない人だった。 きょとんとする私に彼は笑いかける。 「はい、これ」 差し出されたのは温かいココアの缶。 「え……でも……」 「俺のおごり。それ飲んで元気だしてよ」 彼は、ぐいっと無理やり缶を私の手に握らせて、にこっと笑う。 綺麗な黒髪が風に揺れて眼鏡にかかる。 一旦眼鏡を外して髪を整えてからかけ直す。 その一連の動作を、私は呼吸すら忘れて見惚れてしまっていた。 綺麗な人。 それが彼に対する私の第一印象だった。
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