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「疲れてない?」 「大丈夫です。だってヒールじゃないし」 私の言葉に彼が微笑む。 私もいつの間にか微笑んでしまう。 たくさんの人がいる大きな公園をぐるりと歩きながら、やっぱり先生のことを考えてしまっていた。 いつかこういう風に堂々と並んで歩ける日が来るといいな……。 「あの人やめてさ、俺と付き合ってみたら?」 「ええ?」 「こんな普通のデートなんてしたことないでしょ? 普通のことができない恋なんか楽しくないでしょ」 普通のこと。 街で買い物して公園を散歩することや、水族館や遊園地に行くこと。 それができない。 ……一緒に帰ることさえもできない。
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