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教室を出ていく先生の後ろ姿を眺めていると、バシッと肩に衝撃が走った。 「こら紗奈、見とれてないで音楽室に移動だよー」 千尋は意地悪な笑みを浮かべながら、私を急かす。 見とれてたのがバレてしまった……。 音楽室への道はちょっと遠い。 教室がある棟からSクラスが集まる棟を抜けた先にある。 千尋と2人、他愛もない話をしながら歩いていると、前から亮太くんが歩いてきた。 「あ、おはよ」 「おはようございます」 言葉を交わしたのはそれだけだった。 だけど、私に向けられた笑顔は、意地悪な笑みでも優しい笑みでもなく、'強がり'の笑みに見えた。
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