①‐8

12/20
前へ
/363ページ
次へ
ゆっくりと近づいてくる彼の手は、上手く私の両手を掴んで動きを封じる。 「今日は会議だったはずだから、あと1時間はここに戻ってこない」 「……何が目的なの?」 私がそう聞くと、彼はふっと微笑んだ。 「別に紗奈をどうこうしたいわけじゃない」 その言葉に背筋がぞくっとする。 「じゃあ何がしたいの?」 「ただ、紗奈と先生が別れてくれればいい」 どうしてそんなことを望んでいるのか、 それがここに閉じ込められることと何の関係があるのか、 まったく分からずに彼の様子を窺った。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2267人が本棚に入れています
本棚に追加