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だけどそんな勇気もなくて、 何が好きなのか直接聞いてみたら?とか その人が読んでる本を借りてみたら?とか 曖昧なアドバイスを曖昧な笑顔で繰り返した。 最悪だ……。 そして最低だ。 何が'友達'だ。 嘘をついているのに。 本当は嫉妬しているのに。 この場にいるのが辛くて、「そろそろ教室に戻るね」と言ったら、彼女は寂しそうにしていた。 「紗奈ちゃんと話せてよかった。女の子同士でこんな話するのって楽しいね」 ……私はいつからこんなに卑怯になったんだろう。 そして弱くて脆くて、小さな存在になってしまったんだろう。 その時、トントンと控えめなノックが聞こえた。
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