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「ほら、そうやって自分を責めないで」 あ、バレてる。 ゆかりん先生ってふわふわしてるけど、しっかり見てるんだ。 なんてちょっと偉そうだったかな、って心の中でつっこみを入れてるくらい余裕なのに……なんでだろ。 涙が知らない間に零れていた。 先生は何も言わずにハンカチを差し出してくれる。 そのハンカチは先生によく似合う薄いピンク色で、少しだけ甘い香りがした。 「しばらく様子を見て、まだ調子が悪いようだったら言ってくれる? 病院紹介するから精密検査してみましょう」 私が泣き止むと、冷たいタオルまで渡してくれる至れり尽くせりな対応に思わず、 「先生の旦那さんが羨ましい」ってつぶやくと、 「私はまだ独身だし、残念なことに彼氏もいないの」とおどけた笑みが帰ってきた。
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