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先生は唇を離して、一度だけぎゅっと私を抱きしめてからすぐ離した。 「誰か来るよ。実験室行っておいて」 小さくうなずいて、立ち上がる。 もちろん名残惜しいし寂しいけど、不安はない。 誰かの足音が少しずつ近づいてくるから、私は少し急いで実験室の電気を付けた。 1番前の窓を開けると、外灯の明かりで照らされ青白く光る桜の花びらが舞っているのが見える。 ふと1枚の花びらが、風で手の届きそうなところに飛んできたから手を伸ばそうとした時、ガラッというドアが開く音がして風が外から室内に通り抜けた。
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