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時間にすれば数秒だったのかもしれない。 温かく大きな手は私の体を包んで、そして一度だけ頭をなでて離れていった。 気持ちが通じたという喜びと、また甘えてしまっている私の弱さへの苛立ちが混ざる。 少しずつ見え始めた視界の中で、先生が望遠鏡の方に行ってみんなに何か言っている様子がわかった。 『優しそうな人が全員優しいとは限らない』 私は校舎の壁にもたれたまま、澤田くんの言葉を思い出していた。 澤田くん、永崎先輩は優しい人じゃないのかな? ココアをくれた時の優しい目は嘘だったのかな……
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