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彼は少し笑って、私の手首を強く引く。
私は体勢が保てなくて、倒れこむように近付いてしまう。
「これから考えるよ」
その微笑みは悪意でも敵意でもなく、ただ楽しんでいるだけのようだった。
彼は携帯をポケットに戻し、その空いた手で私の顔に触れる。
「なんで泣いてたの?」
細い指先が涙の軌跡をそっと撫でた。
「何でもないです」
ふぅん、と言う彼はきっと私が泣いてた理由なんかに興味はなくて、ただ私の反応を見ているだけ。
先生も私の反応をよく笑うけど、これはそんなんじゃなく、別の種類だ。
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