①‐4

20/20
前へ
/363ページ
次へ
よく晴れた空に似合わない緊張感を含んだ沈黙。 屋上にいるせいでいつもと聞こえ方が違う予鈴がその沈黙を破り、掴まれたままの手首が解放された。 「早く戻りなよ」 言われなくても戻るし。 まだまだ聞きたいことはあるけど、聞いてもきっと答えてくれないだろう。 私は急いで梯子を下りて、途中、1度だけ彼の方を見ると笑って手を振っていた。 その笑顔は、初めて会ったあの中庭での優しい笑顔に似ていた気がした。 あの日、あの時の彼の目には確かに優しさを感じたのに……。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2267人が本棚に入れています
本棚に追加