秘蜜

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目を開くとそこは見なれた景色だった。 ミルフィオーレにある真6弔花の部屋。 ハヤトは今はそこに住んでいるのだ。 「大丈夫だった?ハヤト……」 声がした方に視線を送るとそこにいたのは一人の少女だった。 彼女の名前はブルーベル。 真6弔花の一人でありマーレに選ばれた雨の守護者である。 ブルーベルは心配そうにハヤトを見つめると何の前触れもなくぎゅっと抱きついた。 なにかあったのかと尋ねるとどうやらうなされていたらしい。 「いつものことでしょう?僕のことなんか…… 気にしていたら負けですよ?」 「それが言えるのは本人だけなんだから!」 苦情をあっさりと言われてしまいハヤトは苦笑を浮かべた。 その様子はとても微笑ましいもの。 ハヤトの記憶に残る大切な思い出の一つ。 彼女にとってこの世界に住む人間は、知り合いと言ってもおかしくない人物ばかりだった。 夢に見る自分の過去と、似すぎているのだ。 目の前にいて自分を心配しているブルーベルも 昔一緒に働いていた人物に性格も容姿もそっくりすぎる。 能力についても、歩けないことについても一緒。 他の人物についてもそれがいえるのだ。 敵対しているボンゴレのメンバーもそれはいえている。 (僕が死んでしまった後の世界……。 それがここでもう一度描かれている。 それなら、この戦いは確実に負ける。) 「ハヤト、どうかしたのですか?」 背後から桔梗に話しかけられ油断していたせいかびくっと肩が跳ねる。 苦笑を浮かべながらなんでもないと端的に答えるとハヤトはある場所へと向かった。 そこは、自分の上司である白蘭の部屋だ。 中に入ると彼はいつものようにマシュマロを食べていた。 視線がこちらに向けられると接客用のソファに腰掛ける。 先に口を開いたの白蘭だった。 「僕は行くよ?綱吉君のところ。 早くユニちゃんを助けないとね。」 彼女は大切な道具だからとあっさりと付け足す白蘭にハヤトはため息を漏らした。 自分の行動や思考は彼に読まれている。つくずく感じた。 しかしそれならばとハヤトも譲らない。
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