秘蜜

4/9
前へ
/63ページ
次へ
「彼は幾度となくあなたの邪魔をしています。 そして、その度にあなたは命を落としています。 僕は…僕は白蘭さんに……」 言いかけた言葉も止まってしまう。 白蘭の指がハヤトの唇にあてられているのだ。 「白蘭さんはずるいです。いつもいつも。」 「大丈夫だよ。そう簡単に負けないから。」 いつもそう言うんだ そうやって誤魔化すんだ いつもいつもあなたは 僕の傍から離れていく 感情は抑えられなかった。 しかしもちろん言われてしまう。 「あ、そうだハヤトちゃん。 ハヤトちゃんは匣での戦いができないから 絶対について来ちゃだめだからね?」 しっかりと釘を刺されてしまえば 目立った行動はできなかった。 その日の夜。ハヤトは夢を見た。 鮮明に浮かび上がるのは時代が違う。 自分が死んでしまってからのこと。 白蘭と真六弔花に似た人物が敵に囲まれていた。 その敵の顔も、見覚えがある。 《何故、わからないんだ…。 僕達属性を持った人間の苦しみが。 ハク様はただ、僕らの居場所を作りたいだけなのに… 人間には、劣悪種には、僕らの気持ちなんて…》 言葉にしても声が届くことはない。 白蘭に似た少年は仲間を殺していった。 その力により、オーラが倍増していく。 あとは、倒すだけのはずだった。だが、消えていく。 隊長格であろう人物の炎が青年を包み込み、灰となっていく。 悪夢だと信じていたかった。 だがそれは予知夢だと…一番わかっていた。 起き上がるとそこは与えられた自室。 外に出ればいつもの廊下が広がっている。 「夢から、覚めたんだ…」 そのまま眠れるわけもなかった。 廊下をゆっくりと歩いていく。 向かった先は白蘭の部屋。 中を覗くとしっかりと白蘭が眠っている。 「よかった…。まだ、いる……」 起きないようにと気遣いながら中に入っていく。 ぐっすりと眠っているのか、彼は起きることはなかった。 「本当は僕、行ってほしくないんですよ? それに…行くならつれていってほしい。 あの時はあなたのことを守れなかったから… 今くらいは、せめて守りたいんですよ?」 聞こえることのない言葉 伝わることのない言葉 留めておかなければならないキモチ それは運命の楔 決して切ることのできない とても硬い楔
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加