~プロローグ~

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 次々と通り過ぎる景色。  住宅街、オフィス街、河川、田園風景。  がたんごとん。  がたんごとん。  人がまばらな電車の中、僕は向かいの窓を流れる景色をぼーっと眺めていた。  がたんごとん。  がたんごとん。  窓から見える景色は茜色にやや黒が掛かっており、見慣れた光景ではあるが素直に綺麗だと思う。  がたんごとん。  がたんごとん。  ふと、向かいの景色から視線を外して背後の景色に眼をやった。  がたんごとん。  がたんごとん。  一瞬だった。  がたんごとん。  がたんごとん。  場所は踏み切り。  がたんごとん。  がたんごとん。  風になびく黒髪を押さえ。  がたんごとん。  がたんごとん。  一人の女の子が立っていた。  がたんごとん。  がたんごとん。  その景色は今まで見た中で、一番、綺麗だった。  がたんごとん。  がたんごとん。  身体中に衝撃が駆け、一瞬、時間が止まった気がした。  がたんごとん。  がたんごとん。  女の子の居た景色はとても、とても綺麗だった――  がたんごとん  がたんごとん  なんのへんてつも無いある日、僕は、一目惚れをした。
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