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―20XX年、東京。
憂鬱かつ空腹感に襲われる4時間目の終わりを告げる質素なチャイムが鳴り響いたと同時に、一人の少年が思い切り両手を伸ばしている。担任が教室を出ると、その少年の机にクラスメイト2人が彼を囲むように集まってきた。
「天馬、給食行こうぜ」
「おう!!」
給食のお誘いに満面の笑みで元気に応えたその少年こそ、この物語の主人公である空駆天馬なのだ。
都会の片隅にある私立新宿みらい総合小学校は、数年前に周辺の私立小学校を統合して出来た、児童数は1000人を超えるほどのマンモス校だ。他の私立校とは違った独特の校風が人気を博し、年々公立校からの編入生が増加している。天馬も編入していた一人なのだが、彼の場合は勉強やスポーツの成績が優秀な児童を対象とした特別枠によってこの小学校にやってきたのだ。天馬と同じ特別枠でやってきたのは、今まさに彼の横にいる幼なじみの溝呂木勇真と、同じくクラスメイトにして親友の五十嵐黒之介だ。彼らは2年生の時からずっと同じクラスで、3人の仲の良さは学年全体から見ても折り紙付きのレベルであった。
「そう言えば勇真、今日のメニューって何だ?」
「え!? お前見なかったのかよ? 今日は天馬の好きな唐揚げカレーとポテトサラダだぞ?」
「マジで?! 俺、絶対おかわりする!!」
「・・・天馬くん、あんまり食べ過ぎると午後の体育きついよ?」
「大丈夫だよ黒之介、昼飯は別腹に入れておくからな」
「なんだよ別腹って・・・」
ケラケラ笑いながら、ランチルームにやってきた3人は、いつも座っている窓側の丸テーブルの一角を陣取り、黒之介に見張りとして座らせると、天馬と勇真は意気揚々と配膳コーナーへ向かっていった。
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