プロローグ

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* (こんな自分、きらい) 朝の身支度を終えたありすは、鏡に向かってため息をついた。 全身鏡にうつっているのは、フリルとリボンがふんだんに盛られたワンピース姿の女の子。 黒のショートカットでしかめっ面をしたありすに、明るい黄色のそのワンピースは、いささかアンバランスのようだった。 * ありすは、この辺りでは名の知れた資産家・鏡園(かがみその)家の一人娘だ。 わかりやすく言えば超が付くほどお金持ちの家のお嬢様、な女子高生である。 そして、ボーイッシュな雰囲気とはいえ、明らかに美少女の部類に入るありす。 周りから見れば、うらやましく思わない人などいないような非常に恵まれた環境でありすは生まれ育った。 * (でも…) 美少女の顔が、切なげに伏せられた。 (出ていきたくないなあ…) 毎朝、ありすは部屋を出る前に、どうしようもない気持ちになるのだった。 たぐいまれなく恵まれたはずのこの少女は、なぜこんなにも苦しそうなのだろうか。
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