プロローグ

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(いかなきゃ……) 重苦しくのしかかる暗い気持ちを振り切るように、ありすはぎゅっと手のひらを握りしめる。 呼吸を整えていると、部屋の外から声をかけられた。 「ありすちゃん、支度はできたかしら?」 ありすの母親だ。 優しく甘い声でありすを呼ぶ。その愛情に満ちた態度に、嘘いつわりはない。 だが (う…) ありすはその声を聞くとますます胸が苦しくなるのだった。 けれども出て行かないわけにもいかない。 ドアノブに手をかけ、ありすはおまじないをかけるように、目をつむる。 (よし) 気持ちを切り替えてありすが目を開けると、それまでのしかめっ面は身をひそめ、 笑顔のありすがそこにいた。 ありすは、部屋の扉に手をかける。
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