プロローグ

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キーンっと耳に突き刺さる母親の叫び声をきっかけに、メイドたちも次々に 「ありす様!大変お似合いでございます!!」 「リボンがよく似合っておいでです!!」 「まるで天使、いえ女神様のようであります!!」 「なんということを!女神様もはだしで逃げ出す美しさでございます!!」 まるで競うように大絶叫を始めるのである。 (ううううう…!) ありすはなんとかとりつくろった笑顔のまま、頭を抱え込みたくなる衝動をおさえていた。 全く異常な光景であるが、これが鏡園家の毎朝の風景なのだ。 たたみかけられる早口と軽い耳鳴りのせいで、もはや何も聞き取れていないありすに構わず、母親とメイドたちによる絶叫の合唱は続いている。 (絶対おかしい、私んち……いやお金持ちらしいのを差し引いても、おかしい……) 「ありすちゃんっ本当に可愛いわっ!!素敵よおおおおおおお!!」 がばちょ!と母親に涙ぐみながら抱きつかれて、ありすはようやくしつらえた笑顔がひきつりそうになるのを必死にこらえた。 もう一度言おう。 これが毎朝の光景なのである。
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