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「さっきはびっくりしたけど、ジークにスパイの才能があるって冗談はよしてよ」
スーラは腹を押さえながらいう。
スーラの反応は普通だ。
いきなり自分がよく知っている人物が実は有り得ない才能を持っていると言われれば普通は信じられずに笑ってしまう。
「……冗談ではないよお嬢ちゃん」
笑っているスーラに向かって店の人は真剣な顔でいい、何を思ったか知らないが顔を剥ぎ始めた。
そして顔を剥がし終わると、さっきまで六十代の老人だった顔が今では三十代後半の男の顔になっていた。
「私の名前はリュウ。職業は一応スパイを育てる学校の教師をやっている」
淡々とリュウが説明しする。
その間、デビはもしかしてという顔をしながら時たまリュウから視線を逸らしてある方向を見ていた。
「じゃあ、向こうに見える建物はもしかして……」
デビは遠くにでかでかと建ててある建物を指さす。
「スパイの学校だ」
「スゲー、俺も入学したい!!」
目をキラキラ輝かせながらジークはいう。
「でも、怪しいわよ」
スーラはジークにだけ聞こえるくらいの小声で言ったつもりだったが、どうやらリュウには聞こえていた。
それを証拠にスーラだけに顔を向ける。
「怪しくなんかない。しかもここに来た以上強制的に君達は学校に入学してもらうよ」
「え~!!」
「いいじゃなね~かよ、どうせ俺達帰るところないし」
いやな顔をするスーラをよそにデビがゲラゲラ笑いながら言う。
実はこの三人とドイルを加えた四人は孤児であった。
だからさっき、犯罪である盗みをしていたのである。
生きるために仕方なく。
「でもドイルはどうするのよ?」
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