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「これも美味しそう~。んー………。いっぱい有りすぎて迷うわね」
後ろの客を気にする事なくじっくりとケーキを眺めながら独り言を呟く。
そんな由利奈に独り言かのように文句をぶつける。
「早く決めろよ…」
「なんか言った?」
キリッと獲物を狙うような鋭い目つきで黒斗を睨みつける。
流石の俺でもこれには逆らうことが出来ず、
「いえ、何も……」
と降参する始末。
女に対して口で勝てる訳がないと、この学園に入学して一番最初に学んだ事だ。
とりあえず、黙っておくことにしよう。
ケーキを選び始めて待つこと10分。
一向に決まる気配がない。
俺達、男共はすでに何個かのケーキを選び終え待機している所だ。
チラリと列の方を向くと、まだかといった表情でお客が顔を覗かせていた。
言いたい事は山々だが、ここで喋ってしまうとアウトだ。
だから、ここは黙っておくのが一番……
「由利奈ちゃん、そんなに悩んだってーー」
ばこんッ!!と。
俺の隣にいた伸士がプロボクシング顔負けのストレートを食らったかのように後ろに飛ばされる。
幸いすぐ後ろには、一樹が居たためお店の方に被害はなく人的被害だけですんだ。
パリパリ、と体全体から静電気のような音を立てながらこちらに右手を向けた状態で叫ぶ。
「うるさいわね!今選んでるのよ!少しは黙ってなさい!」
「そうそう、由利奈っちの言うとおりだよ?」
「ごめんね……すぐ………選び終える……から………」
のどかを除く二人からは、冷たい言葉の嵐。
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