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「・・・さて、帰るかな。 転ーーー」
「って、ちょっと待てって」
裕鬼は、焦った顔で俺のコートを掴んできた。
ギュッと握っているては絶対に離してくれそうにない。
ハアっとため息をつき裕鬼の相手をすることにする。
「…どした?“俺よりか”強い裕鬼さん」
相手をするっていっても少しだけど。
殺気を出しながら、ジリジリと裕鬼に迫っていく。
さすがの裕鬼でも俺の本気の殺気に本当に怒っていると勘違いをし真面目の顔つきになる。
「…わ、悪かったって」
裕鬼は、両手をあげながら謝ってきた。
本当の所、裕鬼をいじめたいがために本気の殺気を出している訳であってこれっぽちも怒っていない。
困惑している裕鬼に俺は思わずニヤけそうになるが表情を崩さないように我慢する。
「わかればよろしい」
その言葉を聞いた瞬間、冷や汗を流しながら安堵のため息をつく。
裕鬼をいじめるのはやっぱり飽きないな。
次はもっと今日以上にいじめるとするか。
俺のドSの心が開花しかけようとした瞬間、それをもぎ取るような事を言った。
「つか、黒斗って今日総長に呼ばれてるんだろ?」
春さきの気候でほんのり温かい風が吹く中で、その場だけが氷ついたのは言うまでもない。
数秒間俺だけの時間がとまる。
そのままずっと止まって欲しいのは山々だけど辺りを漂う死臭の匂いが俺を現実へと呼び戻す。
「・・・」
「黒斗どしたんだ?」
急に、無言になった俺の顔を覗きながら言ってきた。
「・・・や、やべぇ。今、何時?」
「今・・・1時5分だけど?」
俺は、時間を聞いた瞬間、冷や汗が流れだした。
「・・・総長に1時までに来いっていわれたのに。遅刻だ」
急に、俺のテンションが下がった事に対して、裕鬼はニヤけながら見ていた。
「これは総長のお説教が待っているな。」
俺の背中を勢いよく叩く。
正直、裕鬼に馬鹿にされたらかなりうざい…。
俺が急に後ろを向くと、裕鬼がびびった顔で見ていた。
「裕鬼、覚えとけよ。=転移=」
次は、嘘偽りのない本当の殺気を出しながら転移した。
黒斗が去った後、一人になった裕鬼は頭を抱え込みぶつぶつと呟く。
「・・・やべぇ。黒斗がキレた・・・」
「まぁ、当分黒斗に会わないようにしよう。うん。=転移=」
少しの間黒斗と会わないと誓った裕鬼は少し疲れた表情で消えた。
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