愛してるなんて安っぽい言葉はいらない

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――いらない。 いらない。 いらない……。 彼は事あるごとに、愛してると軽々、口にする。 私は晃のケータイに受信した他の女からのメールを表示する。そして、テーブルの上に投げ出した。 ケータイはピタリと晃の目の前で止まる。 彼は、チラリと目をやるだけで、ケータイに触れようとしない。 「みさきゴメン……。愛してるから、許して」 椅子に座ったまま顔だけ、私の方を向き、上目遣いに、仁王立ちする私を眺める。 これで、何度目?何回繰り返せば、この男は反省するんだろう。 私は悲しくなる。だって、私はこんなヤツでも、大好きだから。 出会いは大学のオールラウンドサークル。バーベキューしたり、ボーリングしたり、月一で集まって遊ぶだけのサークル。 ある日、私は当時付き合ってた彼に振られた。辛くて、辛くて、遊ぶ気持ちにならず、サークルに連絡せずに活動を休んで、家でぼーっとこたつに入って過ごしていた。 ピーンポーンと呼び鈴がなる。私は面倒くさく思いながらも、玄関まで駆け足で向かう。片目をつぶり、覗き穴からそっと外を窺う。 ニッコリと大きな口を開けて、晃はこちらを見つめていた。 「みっさきー!いるんだろ?酒持ってきたから、一緒にのもうぜ」 二人でこたつに入り、くだらない話で笑いながら、缶チューハイを何本も空けた。 私は目の前がぼやけてきた。楽しいはずなのに、涙が頬を伝う。 それを見て、晃も同じように、悲しい顔をする。そして、そっと私の背中に手を回し、撫でてくれた。 「俺、みさきが好きだよ。俺のこと好きになってくれたら、絶対こんな思いさせないから」 私は晃の顔を見る。晃も真っすぐ私を見つめた。 言葉はなく、辺りはしんとして、晃の吐息だけが耳に残る……。ゆっくりまぶたを閉じる。そして、晃の唇が私の唇に重なる……。 「愛してるなんて言わないでよ!」 私は膝を床に着いて、あの時と同じように泣く。こうすれば、きっとまた、晃の愛を感じられるから。 言葉なんかいらない。晃の本当の心が、愛がほしい。 あの時くれたみたいに……。
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