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「ここが聖徳高校か…」
俺は教室に足を踏み入れた。
中では顔馴染みだと思われる人が数人話しているだけで、教室にいるほとんどは自分の席で静かにしていた。
(まあ、クラスの雰囲気が暗くても、俺には関係ないけど)
そう思いながらとりあえず自分の席についた。
「席、隣だな。これから一年よろしくな。」
隣からそんな声が聞こえてきた。
「あぁ… よろしく…」
「俺、桜井 守(サクライ マモル)。お前は?」
「佐藤 雲英。」
「雲英って言うんだ。珍しい名前だな。」
「そうだね。」
「俺、お前と仲良くやっていけそうな気がする。男の勘ってやつ?」
眩しいくらいの笑顔を作ってそう言った。
(男の勘? なんだそれ。俺は別に友達なんていらない。)
「…………とう。」
(あれ以来、俺は…)
「おい、佐藤。聞いてるか?」
「あっ、ごめん。考え事してた。」
「なあ佐藤、俺ら出会ってまだ数分だけどさ、お前のことを雲英って呼んでいいか? その名前、気に入った!!」
「別にいいよ。」
「俺のことは守って呼んでくれ。」
そう言って桜井は拳を作ってつき出してきた。あの笑顔と共に。
(とりあえずこいつと関わってみるか…)
俺はその拳に応えた。あれ以来、家以外では見せることのなかった笑顔を無理に作って…
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