prologue

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       *  人生っていうのは、死ぬまで続くジジ抜きとババ抜きだ。  幸せになれる条件(カード)を揃えて他を出し抜き、不幸の(ババ)を押しつけ合う、策謀渦巻く陰湿なゲーム。  ただ、ゲームと言っても、当事者にとっては紛れもない現実で。  だからこそ、他人や、はたまた親しい人が不幸になるとしてもババを押しつけ、いち早く泥沼から脱したがる。  自分のためにも、他人(ひと)のためにも、必死になれる。死に物狂いになれる。  ……でも。  本当は皆気づいてる。  気づいていても気づかない振りをしてる。  どんなに辛く悲しい時も、どんなに理不尽だと感じる状況だとしても。  そこから抜け出して幸せを掴み取れるかは、自分次第なんだってこと――。 「それではこれより、第二十三回神様サミットを開催する」  無国籍都市・別天津(ことあまつ)。  その街角にひっそりと佇む教会。  外観こそ新しいものの、周囲に建つ店舗や娯楽施設の華やかさに埋没してしまっている、そんな教会で。 「諸君、わたしのことは『(ゴッド~追いつけないと知りつつも虹を追いかけたあの日の夕暮れに食べたちゃんこ鍋は美味かった~)』と呼ぶように。略して神ちゃんでもいいぞ」 「はい、神ちゃん」 「何だね、草食呪術医」  教会を訪れた来客による、奇妙な会議が催されていた。 「八勢力も首脳いないんですが。しかも、唯一の首脳は自称ですし」  来客は五名。  質素にあつらえられた内装の教会には、来客が思うままに席を陣取り、個々の座る位置に統一感はない。 「キサマっ! この神ちゃんを愚弄するか!」 「いや……その、ねえ?」  ある者は盛大に欠伸しながらあらぬ方向を見、またある者は孫を見守るお婆ちゃんも真っ青なくらい、穏やかに笑んでいる。  だからだろう、ブレザータイプの学生服を着た少女が仰々しい物言いで話しても、全くもって緊迫感に欠けるのは。
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