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「……先輩。僕、この人には逆らわないって決めてるんです」
草食呪術医と呼ばれた彼が視線で救難信号を送るも、送られた少年は虚空に視線を投げかけ、一本調子な声で断る。
二人共神ちゃん同様、ブレザータイプの学生服姿だ。
「フフ、さすがだ月山君。君は全くもって物分かりが良い、利口だよ」
「……逆らったところで徒労に終わりますし」
「しかし一つ間違っているぞ。わたしは人にあって人にあらず。言わば現人神なので、『この人』という表現は適切ではない」
付け加えられた一言が聞こえているのかいないのか、神ちゃんは得意気に鼻を鳴らす。
「ケッ、玩具を与えられるとすぐこれだ。これだから人間ってのは」
先程大欠伸していた少年が蔑むような目で神ちゃんを睨む。
人相の悪い彼。
その耳にはピアス、学生服も着崩し、チェーンやら何やらで好き勝手改造してある。
刈り込まれた銀髪や乱暴な口調も含め、柄の悪さが目立つ。
「この子に限っては元からこうだと思うけどね」
「うふふ、元気で良いじゃないですか」
首を竦めて苦笑混じりに話す草食呪術医。
その後方、救援を断った少年のすぐ隣から物腰柔らかな声が上がった。
「無病息災、病は気から。心健やかなれば、仏様の限りない智慧の光が無明を照らしてくださることでしょう」
この場にいる少年少女とは幾らか歳が離れたように見える女性が言う。
緩くウェーブがかったセミロングの黒髪。
飾り気のないブラウスに黒のタイトスカートと、落ち着いた印象を受ける服装。
東欧の映画女優を思わせる美貌に柔和な笑みがよく似合う。
「ハッ。オレは聖女ヅラしたオマエが一番気に入らないね」
口を挟んだ彼女に辛辣な言葉を浴びせると、柄の悪そうな彼は前の椅子に足を乗せる。
「大体、オマエの隣にいるヤツの監視を任せられたのはオレだ。邪魔なんだよ、オマエ」
行儀良く横並びする椅子に足を乗せる行為は酷く無作法だが、それを指摘する神父や牧師、修道女はいない。
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