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春風が、病室の窓から
入り込んでくる。
そして
私と彼は、幸せそうな顔で
笑っている―…。
「はー、久しぶりに優の笑った顔見た気がする!」
「なんだよ、久しぶりに彼女に会えたんだから笑わなきゃ損だろ?」
「もうっ//また、そうやって―…」
突然、彼からキスをされた。
入院する前も、キスをしたけど
全然違う、キスだった。
まるで、別れを告げるような
寂しいキスだった。
「…俺、春菜が彼女でよかったと思う」
「どうしたの?」
私は
知るよしもなかった。
今、優と話している
この瞬間瞬間が、全て
私の硝子の想い出に
なってしまうことを…
「…いや、なんでもない。言ってみただけ!」
「もうっ!なにそれっ」
優が、一瞬…ほんの一瞬だけ
歪んだように見えた。
私は、直ぐに帰ると告げて
病室を後にした。
『嫌な胸騒ぎ…』
胸騒ぎが、全然止まらなかった。
『気のせい…だよね。』
私は、自分の思い過ごしだ
優が死んでしまうなんて
最低な想像をしてしまった
そんな事を、思いながら
家のお風呂に入った。
シャアァァア
頭を洗ってるときも
ずっと胸騒ぎは、収まらない。
フワッ―…
誰かが…いや、優の声で
『春菜…ごめんな…』
その一言だけ…呟かれた…
私は、急いで
お風呂から、あがって
部屋にある、携帯を見に行った。
携帯には、着信履歴があった。
優のお母さんからの
電話だった―…。
優は…、私が病院から
出た瞬間…様態が悪化し
意識が戻らなかった…と。
「ずっと…ず…っと一緒に居てあげれば…よか…た…」
床に、私の涙が落ちる。
「優…優…っ…」
名前を呼べば呼ぶほど
頭の中に、優との思い出が過った。
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