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その携帯を握る手は案外綺麗だった。男の人の割には細くて、でも、天音とはまるで違う。骨ばった指には手入れされた爪。
それから天音の視線は少し上に行き着いた。
髭のない顎。形の良い唇。思ったよりも筋の通った鼻に茶色がかった瞳―――パーツパーツを見て行くと、端正な顔立ちである。だが、真っ白な髪が、切れ目と合わさった瞬間、やんちゃを通り越した容姿を作り出した。
「……何?」
ぶっきらぼうな発言に天音は「はっ」とする。
あからさまに他人を凝視していたらしく、ぶつかった視線につり上がっている目がさらに持ち上げられた。眉間のシワが不機嫌さの高さを助長する。
パッと目を反らすと「ちっ」と舌打ちがなされた。
一気に気まずくなる天音に腹痛の波が再発する。
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