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痛みに耐えようとすればするほどどうにもならないジレンマに襲われた。
力を込めも痛みに苛まれ、電車の横揺れに足元はぐらつく。
「きゃ……」
「……っぶね……」
ドン、と天音の頭がトクトクと音のする場所に傾いた。
というより、変な方向に向かいそうな天音の頭を、前方の彼が無理矢理引き寄せたのだ。
トクトクと定期的なリズムを刻んでいるのは、彼の胸だと理解するまでに数瞬を要した。
「あ…の……?」
「……具合……」
「はい……?」
「具合……悪いなら……少し……こうしてれば?」
耳元で囁かれたのは意外な言葉だった。
見た目に似合わない優しさに困惑する。
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