6人が本棚に入れています
本棚に追加
月が満ちていた昨晩と違い、少し欠けた十六夜。あたしは茂みに身を潜めていた。髪が赤茶色だから上手く夜に紛れたかは自信がない。
あたしは、茂みからその先の広い空間を覗き見る。そこには、一つ目の巨大な大男が熊を喰らっている様子が目に映る。あまり気持ち良いものではない。
その一つ目の奥には、あたしの相棒が影を潜めているはずだ。あいつはあたしと違い夜の色をした髪をしている。さあ、そろそろ良いんじゃないだろうか?
あたしは、今すぐにでもこの大鎌で奴の首を狩りたいと思っている。相棒からの合図はない。まだか?
あたしは、姿勢を少し変えてしまい、大鎌についた鎖を鳴らしてしまう。
「ぐぁ?」
一つ目が、あたしの方を見て歩いてくる。足音が大きい。その大きさも、さっきが小さい足音だったと思わせるほどまでなる。
やむを得ず、あたしは茂みから飛び出した。飛び出す際に、奴が茂みに伸ばした手の上を走り抜け、大鎌で首を狙い横振り。一つ目の首は呆気なく吹っ飛んだ。
「おいおい、予定を大幅に変えんなよな」
「仕方ないだろ。大体、あたしならこのていど朝飯前だ。お前はあたしを弱く見すぎなんだ!」
あたしに話しかけてきた相棒である男。髪は黒髪で今風なのかよくわからないが、ワックスと言う奴で髪型を整えている。顔は割かとマシで、認めたくないが紛れもない二枚目顔だ。そして相棒の名前は、湯村東風【ユムラ コチ】だ。
「だって、悠霞はまだ一緒に働いて三回目なんだぜ? まあ、確かに一つ目は最低ランクの邪悪だけどな」
あたしの腕試しでも、あんな雑魚ではあたしを計れない。そもそも、なんであたしがこんなことをしているかと言うと少し時間が遡る。
最初のコメントを投稿しよう!